- 2020.08.07
- 2015.08.20
C子とS夫がゆく! イベントレポート「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ 2015」
C子: さて、今回は風光明媚な土地からのレポートです。
S夫: 東京から車で約3時間。3年に一度開催される「越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭」の会場に来ております。
C子: エリア面積は760平方キロメートル。うむむ、広すぎて見当がつきません。
S夫: 東京23区全域でおよそ621平方キロ、 琵琶湖が670平方キロ。展示を一通り見ようとすると、ゆうに1週間はかかるそうです。
C子: 恒久作品を含めると、作品数は約380も! わぁ、世界最大級といわれるわけですね。
S夫: エリアは大きく6つ、周遊ツアーでは10に分かれています。各地域にインフォメーションセンターが設けられ、そのうちのひとつをカッティングシートで装飾しています。
C子: 帰りに寄りたくなる温泉や飲食店情報もゲットできるという。
S夫: 誰かさんが「これ食べたい」とか言い出す前に、会場をまわってみましょう。
C子: 新潟といえば、へぎそば・・・。
S夫: それは後! 先ずは「大地の芸術祭」の中心施設、十日町駅近くにある、原広司さんが設計した、越後妻有里山現代美術館[キナーレ]は外せません。
S夫: 蔡國強(ツァイ・グオチャン)さんの作品《蓬莱山》です。
C子: えっ? このこんもりした緑のお山は作品なんですか?
S夫: 人工物です。裏側から見ると、こんな感じ。
S夫: 周辺の宙に浮いているオブジェも作品の一部で、地元の人たちとつくった藁細工です。
C子: 人と地域と自然が一体となったアートイベントならではですね。
C子: 蔡國強さんは今、横浜でも大規模個展を開催中ですよね。
S夫: キナーレの館内では火薬画の作品も見られますよ。ほかにもたっくさんの作品があります。例えばこちら、レアンドロ・エルリッヒさんの「トンネル」(2012)。
C子: あのー? どう見ても屋外作品なんですけど?
S夫: いいえ。間違いなく、館内で写したものです。
C子: むむっ。つまり、この謎は会場で解けと。
S夫: あまりネタバレしちゃってもいけません。さ、お次は吹き抜け空間に展示されていた「大地を包む皮膚 十日町文様 カラムシ唐草’13」のアップ。2013年の眞田岳彦さんの作品です。
S夫: 米や糠などを含んだフィルムシートで、避難所内での仕切りや、緊急時には衣服としても使えるように作られているそうです。
C子: 多々ある作品のなかからシートに反応するあたり、さすがS夫さん。
S夫: だけでなく、この作品からは深い歴史性を感じたのですよ。
C子: そうか、 この辺りは2004年に大きな地震に見舞われてますものね。
S夫: その通り。あ、そろそろガイドツアーのバスが出発します。キナーレ会場の見学はここまで。
C子: えー! まだクワクボリョウタさんのインスタレーションとか、栗田宏一さんの作品を見てないですー!
S夫: 栗田さんの「ソイルライブラリー/新潟」(2012)は興味深かったですね。自然の土ってこんな多彩なのかと。
C子: 自分だけ見たなんてズルーい!
C子: え、移動のバスってこれですか?
S夫: いえ、これはスタッフ専用の電気自動車(EV)です。ドアにシートが貼られていたので、ついパチリと。でも時間がなくて、触れなかったんですよねー。
C子: 怪しい。車上荒らしかと思われたらどーするんですか。
S夫:松代エリアの北側、明後日新聞社・峰方山平エリアにやってきました。
C子: あさってしんぶんしゃ・みねかたやまだいら・えりあ、ですね。
S夫: 小学校の体育館を、2009年に地域芸術研究所:CIANとして改修した建物です。CIANの提唱者である川俣正さんが、 館内で巨大ジオラマの新作を発表しています。
C子: おおー、大迫力!
S夫: 川俣作品もですが、会場に入る手前のサインとかがまたカッコ良くてですね。
C子: ははぁ。さてはシートが使われていたんですね。
C子: ベニヤに貼るには、ちょっとした裏技が必要なんでしたよね。
S夫: 好評のうちに先月終了した弊社の「装飾用シート 製作の現場展」でご紹介した通り、表面を・・・
C子: 先を急ぎますので、以下略します。
S夫: 大巻伸嗣さんの「影向(ようごう)の家」です。
C子: 見学者が入場待ちをしていますね。
S夫: 真っ暗にした室内空間ならではの展示なので、観賞に時間がかかっていました。それに、ずーーっと、いつまでーーーも見ていられる、そんな作品でした。
C子: 光と煙を使った幻想的な作品だそうですが、撮影禁止のため写真はありません。
C子: 設営明けでお疲れ気味のS夫さん、日陰に避難しての遠景の画です。
S夫: とにかく初日は天気がむっちゃ良くて。いやー、暑かった!
C子: 水と日傘は必需品ですね。
S夫: 長い柄の傘は持ち込めない会場もあるので、折りたたみがいいでしょうね。それと、コンビニや飲食店も道々殆どないので、小腹が空いた時にチョコッと食べれるものとか。
C子:チョコレートはNGですね、でろでろに溶けちゃう。
S夫: 空家になっていた個人医院を会場とした、イ・ブル/スタジオ イ・ブルによる「ドクターズ・ハウス」です。
C子: 2012年に森美術館で大規模な個展をやったアーティストですね。
S夫: 廊下でのインスタレーションは、ミラーのシートを木の床や建具に貼り込んでいると思われます。
C子: 床がピッカピカに磨かれたようにも見えますが。
S夫: 天井の色が、 木の床に貼られたシートに映り込んでいるのでしょう。どうやってんのかなーと、不思議な作品でした。
S夫: 十日町の北東、うぶすな・下条飛渡エリアに移動してきました。
C子: げじょうとびたり、と読みます。 一帯には土をテーマにした作品が多いとか。
S夫: Soil Museum もぐらの館の外にあった、大平和正さんの「風還元『球体 01』」は、中は空洞ですが、重さは21トンもあるそうです。
C子: そして建物は、6年前まで小学校として使われていた。
S夫:『陶磁郎』のフクヘンだった坂井基樹さんがプロジェクト・ディレクターを務め、陶芸や写真などさまざまな領域で活動している9組の作家が出展しているので、見どころ満載です。
C子: 公式サイトおよびガイドブックからの情報です。
S夫: 1冊あると便利ですよ。あれもこれも見逃したーと、後で悔やまないようにしましょう。手塚建築研究所の新作や、みかんぐみ、アトリエ・ワンと大学研究室との合同作品も既存でありますし。
C子: CSデザインセンターの並びにある某企業さんのエントランスロビーに飾られている立体作品をつくったイ・ジェヒョ(季在孝)さんも出てたんですね、津南エリアに。
S夫: えッ?! 見逃した・・・。
C子:ということにならないようにしましょう。
S夫:(オホン!)その津南エリアで、弊社が手掛けた「アジアインフォメーションセンター&カフェ」について、そろそろご説明しましょう。
C子:ええーーっ? もっと見せてくださいよー。
S夫: 却下。場所はビュンと南に飛びまして、アジア芸術村・津南エリアです。
S夫: 越後田中駅の北西、施設番号「M047」と覚えてくださいね。
C子: 津南ポークで有名な地域ですね。
S夫: 一発で覚えてくれて何よりです。元は公民館だった建物で、前回もインフォセンターとして使われています。出入口まわりのサインをシートで装飾しました。ちなみに今回の改修前の外観がこちら。
C子: おおー、ずいぶんと変わるものですねー。
S夫: まずは、3年のあいだにガラスの表面などに付着したガンコな汚れを落とし、シートを貼る壁面も黄色く塗装しなおして、下地づくりから念入りに・・・。
C子: 私の顔を直視しながら解説しないでもらえますか。
S夫: 黄と青が今年のキー・カラーなので、それを意識したデザインです。
C子: なるほど。ガラス戸を開くと、黄色の壁と青いガラスが重なったところが緑に見えるという。会場全域に広がる豊かな自然のイメージですね。
S夫: 扉を全開にすると、黄色い壁に描いた家型の白い枠に「ASIAN ARTPLATFORM」の文字がちょうど納まるようにもしました。シートの透過性が効いています。
S夫: 使ったシートですが、ブルーはIROMIZU、文字の部分は粘着の強いテンタック、ウィンドウはカッティングシートです。
C子: 白いシートで書かれているのは営業時間ですか。あっ、カフェもあるんですね♪
S夫: 地元の食材を使ったアジア料理やドリンクを提供しています。
C子: 見てまわるのに疲れたら、休憩もできるわけですね。
S夫: まだまだ残暑が厳しいですからね。皆さん、熱中症には気をつけましょう。
S夫: 室内の壁の一部の文字やサインにもシートが使われています。
C子: 壁に直にシートで文字を貼る展示手法は、最近あちこちで目にしますよ。
S夫: スッキリとキレイに読めるのが好まれているのでしょう。それに、貼って、剥がせるというシートは、慣れていれば施工も早く、終了後の現状復帰も簡単ですから。
C子: なるほど。開催は3年に一度、会期は約2か月・50日間だけですものね。
S夫: 屋外の雨風にも耐えて、剥がれても貼り替えられます。他のエリアのインフォ・センターでもシートが使われているのを見ましたよ。
C子: 越後妻有に行きたくなりました!
S夫: 3年に一度の芸術祭。ぜひ大自然に包まれて、アートを満喫してきてください。
「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ 2015」
会期:2015年7月26日~9月13日
会場:越後妻有地域 (新潟県十日町市、津南町)
出展作品など詳細は下記公式サイトを参照してください
http://www.echigo-tsumari.jp/about/triennale_2015/