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「曽谷朝絵展 -雨色-」8月31日まで開催

美術作家 曽谷朝絵の個展がCSデザインセンターで開催

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東京・東日本橋にある中川ケミカルのショールーム・CSデザインセンターにて、見る角度によって色が変化する「セプテットフィルム」を使った、美術作家、曽谷朝絵の個展が開催されています(会期:2022年5月26日〜8月31日)。

 

中川ケミカルのショールーム・CSデザインセンターは今、色と光にあふれ、一度でも訪れたことがある人なら、エレベーターから降りた瞬間に、感嘆の声を思わず洩らしてしまうことでしょう。
此の場でしか体験できない空間が、今回のコラボによって出現しました。

 

L1008264_▲ 「曽谷朝絵展 -雨色-」会場風景

L1008268▲ オフィスと廊下を仕切るガラスも作家のキャンバス、カラフルな反射光が映り込む白い壁も作品の1つに

 

美術作家の曽谷朝絵さんとのコラボ

この魅惑の空間は国内外を舞台に活動中の美術作家、曽谷朝絵さんの作品、“雨色” です。
曽谷さんのデザインとディレクションをもとに、中川ケミカルの“セプテットフィルム”を使い、中川ケミカルが施工。共に夢のような空間を作り出しました。
この“セプテットフィルム”は、曽谷さんの「こんなフィルムを使いたい」という要望をきっかけに中川ケミカルが作った素材で、本素材は開発の段階からの曽谷さんとのコラボレーションと言えます。

さらには、曽谷さんの指名により迎えた照明デザイナーの萩原克奈恵さんと曽谷さんのディレクション、中川ケミカルの施行によりライティングが精密に行われ、本展ならではの空間が創出されました。

 

曽谷朝絵/Asae Soya プロフィール
美術作家。絵画とインスタレーションの両面で制作を続けている。光と色彩に満ちあふれたその作品は、観る者の視覚を越えて身体感覚を呼び起こす。
2006年東京藝術大学大学院博士後期課程美術研究科油画専攻にて博士号(美術)取得 。2001年「昭和シェル石油現代美術賞」グランプリ、2002年「VOCA展2002」VOCA賞(グランプリ)、2013年「横浜文化賞文化・芸術奨励賞」、「神奈川文化未来賞」ほか、受賞多数。
2013年に水戸芸術館(茨城)にて「宙色 (そらいろ)」、2022年にスパイラルガーデン(東京)にて「曽谷朝絵展 とことこふわり」などの大規模個展を開催するなど、全国での作品発表多数。東京、ニューヨークや西安(中国)などで展覧会開催やパブリックアートを制作している。2014年には文化庁在外研修員として米国ニューヨークに滞在。2018年にはTOKAS二国間交流事業派遣クリエイターとしてスイス・バーゼルに滞在。
主な諸策に、作品集『曽谷朝絵 宙色(そらいろ)』(青幻舎、2013年)がある。
http://www.morning-picture.com/

 

萩原克奈恵/Kanae Hagiwara プロフィール
ライティングデザイナー。建築照明や昼光照明、アートインスタレーションなど、光に関する幅広いライティングデザインに携わる。

 


L1008285▲ 「曽谷朝絵展 -雨色-」会場風景

 

アーティストメッセージ

-雨色- “ame iro” Colors of rain
部屋の中に降り続ける、虹色の光の雨をイメージした空間です。
透明、不透明が入り混じる様々な偏光フィルムで作られた雨粒を、レイヤー状のガラスに貼ります。雨粒は光や視点により色を変え、昼は窓からの太陽光の透過や反射でまるで天気雨の中に入り込んだような空間に、また夜は照明演出により光の粒のシャンデリアに入り込んだような空間になります。
雨は命の源としての恵みの雨でもあり、大変なことが起こり続けているこの世界への嘆きの雨でもあります。その中を歩き回って様々な色や光に打たれるうちに、様々な想いを雨に解き放てるような空間になればと思っています。(曽谷朝絵)

 

L1008259▲ セプテットフィルムによって表現された色と光の雨粒

 

「ありえないような光景」を創る

今回の展覧会では、昼夜で作品の表情と、鑑賞体験も大きく変わるため、会期冒頭の7日間に限り、20時まで開場時間が延期されました。
さらに初日には、“ナイトミュージアム”の中で、曽谷さんのほか、萩原さんも出席したギャラリートークが2回開催され、今回の展覧会の出来栄えについて、さらには作品がどのようにつくられていったのか、作家自身の言葉で語られました。

L1008332▲ 5月26日に開催されたギャラリートークで作品について説明する曽谷さん

ーー「今回、CSデザインセンターで発表した作品は、初めて発表するシリーズです。室内なのに、雨がザーザーと降りしきっている。水柱がたちのぼり、光と水の粒を全身で浴びる。そんなありえない光景を、此の場につくり出したいと考えました。」

 

L1008398▲ 会場風景(夜間)

ーー「水は、デビュー以来、繰り返し表現を試みてきたテーマです。いのちの恵み、生命の源である一方で、水は、例えば涙とか、冷たい雨とか、どこか悲しく、嘆きのイメージも含んでいます。昨今の世の中は、コロナ禍や、海外では戦争が起きたり、それらに対する胸のうちを思うように外に出せていない、そんなもどかしさを抱いているのではないでしょうか。実は、私もその1人です。この展示空間を歩いてもらいながら、Happyな気分と、Sadな気分、この相反する感情が湧きおこって、そのことにまず気づいてほしい。悲喜に限らず、いろんな複雑な感情が湧き起こり、それと対峙するという体験を、この場が与えることができたらとても嬉しいです。」

 

L1008406▲ 会場風景(夜間)

会場では、粒のかたちにカッティングされたものが、窓ガラスやアクリルに貼られています。一見して、ランダムに貼っていったように見えるのですが、どこにどんなかたちの何色の粒をどれくらいの間隔で貼るのかは、すべて図面化されています。

かたちそのものは、曽谷さんが1つ1つは手で描いたもの。かたちと色のスタディは何度も繰り返し、最終的に、大小8つのパターンに絞り込まれました。

 

0F8A8627▲ 膨大な枚数に及んだドローイングとイメージスケッチ

L1008267▲ ライティングボックスを使った作品

L1008304▲ さまざまな“色の粒”をシートで貼った複数枚のアクリル板を重ねた奥行き感のある作品。後ろから照明をあて、さまざまな表情が無限に生み出されている

 

ーー「会場では、1つのオブジェクトから、色の反射、透過する光、床や壁に浮かぶ影といった3つの要素が生まれています。影にしても、ところによっては黒かったり、色がついていたりして、その色付きの“影”も、オブジェクト自体の色は青く見えるのに、影が赤みがかっていたり、その逆もあるなど、実にさまざまです。ライティングは、照明デザイナーの萩原克奈恵さんと一緒に考えました。光の角度はもちろん、強弱を変えてみたり、可動式パーテーションの位置を微妙にズラしたりと、丸2日をかけて調整を繰り返したのですが、私たちのコントロールを超えた表現が生まれています。これは嬉しい“誤算”と言えます。」

 

0F8A8406▲ 可動式パーテーションの位置を変え、壁に映る色の影を確認しながら、ライティングを検討する曽谷さん

L1008458▲ 床・壁に落ちる色の影

ーー「これまで、光や色彩などをテーマに油絵などの絵画と、インスタレーションの両面で制作してきました。この作品は貼られたフィルムだけでなく、窓から差し込む光、人工照明の光、そしてそこを訪れる人の影など実際の光と影も作品の大きな要素です。ずっと光を追い続けてきたことが、こういった実際の光と遊ぶような表現に結実しています。」

 

作家によるギャラリートークが行われたのは、照明による人工の光が最大限発揮される夜間でした(夜間特別開場は終了)。外光が差し込む日中と比べ、雰囲気が全く変わります。曽谷さんによれば、「窓から西陽が差し込む時間帯、15時半前後がとくにきれい」で、天気によっても雰囲気がそれぞれに異なるとのこと。何度でも足を運びたくなる企画展です。

L1008459▲ 西陽が差し込んだ時間帯の会場風景

 

展覧会メイキングを特別公開

特別に、本展会場ができあがるまでの様子を紹介します。設営は、多い時で中川ケミカルのスタッフ10人が参加し、自分たちの手で図面通りにシートを貼り、仕上げました。作家と一緒にアート空間をつくりたい、本展の大きな目的でもありました。設営には約2日ほどを要しています。

0F8A8362▲ 設営の様子

0F8A8382▲ 西側の窓に貼ったシートのカスとりの様子

 

▲ メイキング動画

 

また、本展開催にあわせて、中川ケミカルのオンラインストアで販売している「曽谷朝絵 PHOTO CUBE」にスペシャルエディションが10個限定で登場。(2種各5個)サイズが2L判と大きくなり、エディションナンバーに加えて曽谷さんのサインも入ります。

0F8A8467▲ 本展オリジナルグッズ 曽谷朝絵 PHOTO CUBE「ame・iro」 2L判サイズ 127mm×178mm×40mm 33,000円(税込)

 

企画展概要
曽谷朝絵展  -雨色-
Asae Soya Exhibition  “ame iro”- Colors of rain
会場:中川ケミカル CSデザインセンター(Google maps)
所在地:東京都中央区東日本橋2-1-6 岩田屋ビル3階
会期:2022年5月26日(木)〜8月31日(水)
開場時間:10:30-18:30
休館日:土・日曜、祝日
入場料:無料

使用素材
セプテットフィルム(SPT-01CG/SPT-02CG)など
照明デザイン:萩原克奈恵 / Kanae Hagiwara
企画制作・主催:中川ケミカル

 
 

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「セプテットフィルム」の特徴
今回のコラボ展では、2022年3月に発売されたセプテットフィルム新タイプ「SPT-01CG セプテット コラールクリア」と「SPT-02CG セプテット アクアクリア」の2種類がメインで使用されています。
セプテットフィルムとは、見る角度や貼る下地によって様々な色に変化するシートです。従来タイプと比べて耐候性がUPし、屋外での使用が可能となりました。(屋外1〜3年)また、セパレーターを紙からマットPETに変更したことでより透明度の高いクリアな仕上がりとなっております。

SPT-01CG▲ 「セプテットフィルム」左:SPT-01CG / セプテット コーラルクリア、右:SPT-02CG / セプテット アクアクリア

 
■参考リンク
「セプテットフィルム」施工例レポート(2020年8月7日掲載)
東京・渋谷 仮設空調室外機置場フェンス(デザイン:菊竹 雪)
https://hello-cs.com/article/5655/

 

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