▲ 市原湖畔美術館 ダム貯水湖・高滝湖対岸からの眺め(写真提供:市原湖畔美術館)
C子:東京から車に乗って70~80分、湖のほとりにやってまいりました。
S夫:千葉県の市原湖畔美術館です。
C子:えぇ~っと、前にも一緒に来てますよね。
(第2回市原湖畔美術館 子ども絵画展 参照)
S夫:はい。その時も、助手席で爆睡してましたが。
▲ 市原湖畔美術館と屋外の恒久展示作品(写真提供:市原湖畔美術館)
C子:思い出した! 2013年にリニューアルオープンした際のサイン計画で、翌年の「
第18回CSデザイン賞展」で一般部門のグランプリを受賞した美術館ですよね。
S夫:ご説明ありがとうございます。上位作品をご紹介したCSデザインセンターの企画展では、サインの一部を再現しました。
▲ 館内地下、壁に白く描かれたエレベーターへの誘導サイン(サイン計画:色部義昭/株式会社日本デザインセンター)
▲ チケット売り場のサイン(サイン計画:色部義昭/株式会社日本デザインセンター)
S夫:こちらの美術館では「第5回市原湖畔美術館子ども絵画展」が2月24日から始まっています。絵を描くこと、絵を見ることを通して、地域の子どもたちに自分たちが暮らす市原の魅力を見つけてもらおうという公募展です。
C子:美術館に絵が飾られるなんて、うらやましい。
S夫:当社では今回、3年ぶりに展示協力をしております。
▲ 展覧会ポスターの後ろに見える屋外展示作品は、《Heigh-Ho》 KOSUGE1-16 / 2013
S夫:今年のテーマ「美術館に飾りたい絵」に対して、市内の幼稚園と小学校から6522点の応募があり、そのうち入選した334点が展示されています。
C子:こちらの「子ども絵画展」は毎回、展示が凝っていて、すごく楽しい。一生の記念になりますよ。
▲ 上と下の写真「第5回市原湖畔美術館 子ども絵画展」会場の様子 © 高田洋三
C子:なんか、壁がすごいことになってますよ。色がビシャー! ブシャー!って。
S夫:トイソルジャーたちのしわざです。
C子:? もしかして、会場の入り口に立ってたおもちゃの兵隊さんですか?
▲ 美術館1階 展示室1(ギャラリー1)入口に立つパーマネントワーク 《Toy Soldier》 © 高田洋三
S夫:トイソルジャーはアートの番人なんです・・・
C子:美術館のパーマネントワーク(恒久展示作品)でしたか。
S夫:迫りくる敵からアートを守る任務に就いているのです・・・
C子:敵・・・?
S夫:アートの敵、なんだと思います? C子さん・・・
C子:その前に、あのぅ? どうして我々は物陰に隠れて、ヒソヒソ声で話を・・・?
S夫:決定的瞬間を見逃さないためです。彼は仕事を怠けるという悪癖が・・・
C子:怠ける? わっ? なんか音がしましたよ! ギゴンガコンって!
S夫:トイソルジャーの起動音です。おおー! 動いたー!
▲ 楽な姿勢で監視をサボっているトイソルジャー。(壁のイラストはカッティングシートにインクジェット印刷)
C子:まさかのスクワット!
S夫:2013年のリニュアール以来ずっと立ちっぱなしで、お疲れなんでしょう。
C子:持ち場を離れないのはさすがです。
▲ 「第5回市原湖畔美術館 子ども絵画展」会場でアートの番人を務めるトイソルジャー © 高田洋三
S夫:トイソルジャーの作者は、
KOSUGE1-16のおふたり、土谷享さんと車田智志乃さんによる美術家ユニットです。
C子:こすげいちのじゅうろく?
S夫:現在の拠点は高知県ですが、その前に住んでいた葛飾区内の住所に由来するそうで。
C子:きっと、自分たちのルーツを大事にしていらっしゃるんですね。
S夫:お二人は今回、絵画展の会場構成も担当されています。
▲ 銃を筆に持ち替えて、展示室を守る © 高田洋三
▲ アートの「敵」が現れないか望遠鏡で監視するなど万全の守備体制 © 高田洋三
▲ 地下の展示室の柱のまわりに設けられたのは秘密基地。トイソルジャーたちの手足につながったワイヤーを引っ張って動かし、近付いた”敵”を驚かす仕組み © 高田洋三
C子:改めて会場を見てみると、あちこちにトイソルジャーが配置されていますね。
S夫:部隊で赴任中なんです。さっきの質問の続きですけど、彼らの敵はなんだと思います?
C子:うーん? なんだろう? 予算を削ろうとするエラい大臣とか。
S夫:違いますと、言っておきましょう。アートの敵とは、この子どもたちの絵のような、豊かな感性や自由な発想を妨げるもの。それはー。
C子:わかった! 大人の常識、世の常識ですね!
S夫:ポスターを見ましたね。そう、彼らはこの会場で、アートの世界を守護しているのです。
▲ 白い壁に付着しているのは、トイソルジャーがつけた色、色、色 © 高田洋三
S夫:トイソルジャーが手にしているのが筆というのが素敵ですよね。
C子:展示室の隅に、ローラーを手に、壁を塗り直してる兵隊さんがいますよ。
S夫:真面目だなぁ。カッティングシートなんだから、剥がせば簡単に現状復帰できるのに。
C子:えっ?! これ、塗装じゃないんですかっ?
S夫:期待どおりのリアクション、ありがとうございます。
C子:だって、筆を払ったような擦れ具合とか、垂れてる感じとか、シートには見えませんよ。
S夫:こういう表現もできるんです(ドヤ顏)。
▲ 壁を補修中のトイソルジャー。会場では、いろいろと活躍する彼らの姿にも注目! © 高田洋三
S夫:子どもたちの作品と相乗効果をもたらすエネルギーに満ちた空間を作りたい、訪れた子どもたちに、たくさんの色に包まれる高揚感を感じ取ってもらいたい。それが今回の会場構成を担当したKOSUGE1-16さんたちの願いでした。
C子:なるほど。たくさんの色を塗装で表現するのは大変ですよね。乾かす時間がかかるし、塗料特有の匂いも籠ってしまう。
S夫:そこで、発色が良く、色数も豊富なカッティングシートが採用されました。
▲ 設営図面を手に展示コンセプトを解説するKOSUGE1-16の土谷享さん
▲ 模型で検討してから図面を製作し、イラストレーターでデーター化。ほぼそのままの絵柄がカッティングシートでカットされ、会場内に貼られている
▲ 「子どもたちの絵や表現が目立たなくなってしまうかもと心配していましたが、良い感じのバランスになりました」(KOSUGE1-16) © 高田洋三
S夫:KOSUGE1-16のおふたり曰く、リズムを意識して、トイソルジャーが落書きしているようなイメージと、戦っている痕跡をシートで再現しているそうです。
C子:仕掛けもいろいろあって、本当に楽しい会場ですよね。
S夫:ちなみに、大規模なカッティングシートを使った仕事は今回が初めてだったそうで。
C子:して、評価のほどは?
S夫:「イメージ通りの仕上がりです!」とのお言葉を頂戴しました。ほっ。
▲ 展示室2 騎乗したトイソルジャー。馬の足は可動式で、それが証拠に馬蹄の跡が?! © 高田洋三
C子:展示室1はビビッド色が多めで、騎乗したトイソルジャーが守る展示室2は、淡い色調ですね。
S夫:ペールトーンのレギュラーを多用して、空間に違いを出してみました。
C子:吹き抜けの会場に貼るのは、けっこう大変だったのでは?
S夫:それがね、1日でめどがたったそうです。当社のテクニカルスタッフが、美術館のスタッフさんたちに貼り方をレクチャーしたりなど、あとの作業はスムーズだったと。
C子:みんなで仕上げた会場なんですね。
S夫:夢のある子どもたちの絵と多彩な空間との相乗効果が出せたと、喜んでいただけました。子どもたちに楽しんでもらえたら嬉しいなぁ。
▲ 会期初日に開催されたワークショップの様子。© 高田洋三 《Toy Soldier》のもとになった木製のおもちゃを作る。3月3日にも開催予定(参加費要、定員制要予約) ※予約はWEBサイトより
C子:残念なことに、会期が短いんですよね。3月11日の日曜まで。
S夫:しかも先月、あなたの街の某宣伝部長さんにテレビで紹介された影響か、週末は駐車場がいっぱいになったりする日もあったとか。
C子:この後、紹介されたナイスビューなレストランにも行くんですよね。
S夫:食レポは要りませんヨ、C子さん。
C子:房総の旬の食材がのった釜焼きピッツアを目指して、レッツゴー!
S夫:聞いてない。あっ、場内は走っちゃダメ。トイソルジャーにロックオンされちゃいますよ!
▲ トイソルジャーのプッシュトイはワークショップ限定
▲ 眼前に広がる高滝湖を眺めながらの食事もおススメ!
「第5回市原湖畔美術館子ども絵画展」
会期:2018年2月24日(土)~ 3月11日(日)
開館時間:10:00-17:00(平日)、9:30-19:00(土・祝前日)、9:30-18:00(日・祝日)
休館日:月曜日(祝日の場合、その直後の平日)
市原湖畔美術館ホームページ http://lsm-ichihara.jp/