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加藤正将さんインタビュー 【ピレリ スーパー耐久シリーズ2020】後編

2020年9月5日に富士スピードウェイで開幕し、日本各地を転戦する「スーパー耐久シリーズ(以降、S耐)」に出場した、ST-TCRクラスのレーシング・マシン〈REBELLION Mars Audi RS3 LMS〉のカーラッピングに、中川ケミカルのシートが採用されました。
マシンを操るのは、Audi Team Mars(アウディ・チーム・マーズ)。チームを率いる監督で、ドライバーでもある加藤正将さんに「モータースポーツにおけるシートの可能性」についてお話をうかがいました。

 

7D6A6415_▲ Audi Team Mars 監督兼ドライバーを務める加藤正将さん

 

コロナ禍のなか、開幕したシーズン

ーーーまずは、弊社にデザインを依頼された経緯からお話しいただけますか。

加藤:今年は新型コロナウイルス感染症の世界的な流行の影響で、全く先が読めないシーズンでした。富士での開幕戦が9月5日と決まり、やっといろいろなことが動かせるようになった8月の半ば、御社の中川社長と知り合いまして、車体のデザインについて相談したんです。

ーーー最初の打ち合わせのとき、加藤さんが直々に出向いて来られたときは正直、驚きました。

加藤:例年ですと、メインスポンサー(REBELLION、本社:スイス)も入っての進行となるのですが、黒、グレー、赤のチームカラーなどの決まりごとさえ押さえてくれれば、ある程度は現場裁量で進めていいということで、僕が窓口になって進めました。

 

マシンへのこだわり

ーーー打ち合わせをしていて、ものづくりとか、プロダクトに対するこだわりがとても強い方だなと感じました。

加藤:デザインにはすごくこだわりがあります。ハンドルも握り、監督して、デザインも考える(笑)。

ーーーフロントグリルのカーボン素材のシングルフレームをメタルシートで仕上げたのも、加藤さんのアイデアでした。

加藤:フロントは、車の顔となる部分なので、見る人に何かパワーを感じてもらえるようなデザインにしたかった。刀(ソード)、日本刀をイメージしています。僕たちにとってレーシングスーツは戦闘服なんです。マシンは甲冑であり、その手に刀を持っているというイメージです。でも、あまりやりすぎるとレーシング・マシンとして微妙になってくるので(笑)、そこらへんのバランスは御社にお任せしました。

 

7D6A6376_2▲ フロントグリルのシングルフレーム

 

MADE IN JAPANの素晴らしさ

ーーー国内を転戦するレーシング・マシンのラッピングに日本らしさを求めたのは、どのような想いがあったのでしょうか?

加藤:ウチのマシン〈REBELLION Mars Audi RS3 LMS〉はドイツのAudiが手掛けている車両ですが、日本メーカーの部品がけっこう採用されています。お見せしましょう(ボンネットを開けて、日本製のパーツをいくつか指し示す)。

ーーードイツ車に日本製の部品がこんなに使われているとは意外です。

加藤:そうでしょう? 既製品に満足できないと言い、必要であれば自分たちで内製でつくっちゃうような会社(Audi AG)の、しかもAudiが世界中のチームに供給するレーシングマシンに日本の部品が使われているなんて誇らしいし、みんなにも知ってほしい。”MADE IN JAPAN”の素晴らしさというものを、自分たちが戦うマシンで表現して、レースという媒体を通じて伝えられたらいいなと、ずっと考えていました。

ーーーレースは「媒体」なのですか?

加藤:サーキットは何かを表現できる可能性を持っていると僕は考えています。レースを見てくれている人々に対して、僕たちは走りだけを見せるのではなく、チームとしての考え、メッセージを発信することも可能ではないでしょうか。そういう意味では、レースは媒体と言えます。

ーーーなるほど。

加藤:だから、僕たちからのメッセージを表現した外観のマシンにしたかったのです。

 

Rd1 Fuji24_250_▲ 「S耐 2020」に出走中のAudi Team Marsのマシン〈REBELLION Mars Audi RS3 LMS〉

 

チームのキー・カラーに「日本」をブレンドしたデザイン

ーーー改めまして、今回のデザインの仕上がりについての感想を教えてください。

加藤:すごく気に入っています。チーム全員、喜んでます。他のチームからも「かっこいい」と言われるんですよ。これがまた嬉しいんですよねぇ。

ーーーそれは私たちも嬉しいです!

加藤:見た目にはシートを貼っているとはわからない、ほぼ塗装に見える。そんな質感も気に入ってますが、何と言っても、この真ん中の赤のラインの柄が良いじゃないですか! 我々では絶対に考え出せないデザインでした。

ーーー日本的な要素を入れたいというご要望に対して、マテリオの赤銀舞箔シートの上に赤いIROMIZUを重ね貼りするプランが弊社のテクニカルセンターから出まして、CSデザインセンターで全体のデザインをまとめました。

加藤:箔というマテリアルが端的に日本を表現していますよね。斬新かつカッコいい。僕たち Audi Team Mars らしさが表現できました。

ーーー赤銀舞箔シートに赤いIROMIZUを重ね貼りするのは新しいチャレンジでしたので、気に入っていただけて本当に嬉しいです。

加藤:チャレンジは大歓迎です!

 

その分野で最高のものを選び抜く

ーーー加藤さんはご存知だと思いますが、レーシング・マシンのラッピング分野では弊社は後発です。採用の決め手となったのはなんだったのでしょうか?

加藤:良いタイミングで中川社長に出会えたという天恵もありますが、先ほどお話ししたように、選び抜かれた最高の部品でできたマシンには、日本で一番のシートを使いたいと思いました。

ーーー恐れ入ります。

加藤:今回のキー・カラーのひとつだったグレーの色数の多さには驚かされました。素人には見分けがつかないくらいの微妙な色合いが、見本帳にズラっと(笑)。

ーーーノックス(NOCS)/ タフカル(Tuffcal)のモノトーンのグラデーションの豊富さは弊社の強みです。他社製品だったら、グレーの選択肢が少なかったと思いますよ。

加藤:おかげで、今回のデザインに最適・最高のグレーを、あの中から選ぶことができました。

 

190419_nocs_tuff_web▲ 屋外装飾用シート「ノックス(NOCS)/ タフカル(Tuffcal)」カラーチャート

 

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モータースポーツにおけるシートの可能性

ーーー今回はカーラッピングの他にも、ヘッドライトにプロテクションフィルムを貼っています。ご使用感はいかがでした?

加藤:バッチリです。富士で24時間を一緒に耐えてくれました。

ーーーそれは良かった。貴重なデータになります。

加藤:ヘッドライトはレース中に破損させたくないし、高価なこともあって交換も避けたい部品です。でも、レース中に虫が入ったり、跳び石で傷がついたりするんですが、シートが防いでくれました。

ーーードライバーに指示を出すサインボードの文字も今回、弊社の蛍光反射イエローで作成しました。こちらはいかがでしたか?

加藤:読み取りやすさが格段に上がりました。前回の富士24時間耐久は今日みたいなどしゃ降りでしたが、直線250km/hで走行中でも、パッと一発で判読できました。他のチームから「あのボード、どこの製品?」と訊かれたくらい目立ってました(笑)。

ーーー蛍光反射仕様のシート文字は、小さくてもキラっと冴えるようです。ピットで停車位置に使う立て看板もつくってみました。

加藤:いいですね! また「どこの?」って訊かれちゃうかもしれないな(笑)。

 

7D6A6413_▲ プロテクションフィルムを貼ったヘッドライト

 

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Rd1 Fuji24_136▲ 夜間でも目立つ蛍光反射イエローのサインボード

 

7D6A6459_▲ ピットインしたマシンの停車位置を示す時に使用される立て看板(品番:反射シート CL-167白に出力)

 

加藤:御社とは、いろいろと情報を共有して、改良しながら、これからも一緒にやっていきたいと考えています。

ーーーありがとうございます。私たちももっといろいろと挑戦していきたいです。

加藤:例えばですが、デザインだけでなく、マシンの耐久性とか、空気抵抗とか、シートで改良できないですかね?

ーーー競泳選手が、水の抵抗が小さい素材の水着を着るようなイメージですか?

加藤:車のスピードが上がると、空力(くうりき)と呼んでいる空気の流れが生まれるのですが、ダウンフォース(負の揚力)や空気抵抗、これをコントロールすることがとても重要なんです。僕たちは1/1000秒単位で戦っているので。

ーーーF1などとは違って、市販されている車を市販されている材料で改造して、速さを競うという、S耐らしい可能性ですね。

加藤:昨シーズンはワックスで試してみましたが、シートでも試してみたい。

ーーーぜひ取り組んでみたいミッションです。本日は、明日が決勝という大変なところ、お時間を取っていただいて、ありがとうございました。

加藤:いえいえ。今後も応援よろしくお願いします!

 

レース結果:2020年10月11日(日)に行われた3時間耐久レースで、Audi Team Marsは〈REBELLION Mars Audi RS3 LMS〉でST-TCRクラスで三位入賞を果たしました。おめでとうございます!

 


▲ Audi Team Marsよりご提供頂いた動画

 

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