- 2015.02.05
- 2021.03.09
C子とS夫が行く!【ピレリ スーパー耐久シリーズ2020】前編
S夫:東京から車で約4時間、本日の取材先に着きましたよ、C子さん。
C子:・・・・・・
S夫:着きましたよ! 起きてください! C子さん!
C子:・・・はっ! ここはどこ? 遠くでウィンウィン音がしますけど・・・?
S夫:宮城県のレーシング施設「スポーツランドSUGO」です。
C子:そうでした。「ピレリ スーパー耐久シリーズ2020」の第2戦を観戦に・・・
S夫:仕事に来たんです。ST-TCRクラスに出走するレーシング・マシンのカーラッピングを、弊社で手がけています。今日は予選です。プレスカードを首から下げたらピットに行きますので、シャキッとしてくださいね。
▲ Audi Team Mars 運搬車両(Racing trailer)の側面のロゴもシートで作成
S夫:今回は、運搬用トレーラーに表示したスポンサーロゴの切り貼りなども、弊社でお手伝いしました。
C子:いっぱい車が停まっている駐車場から、すぐに見つけることができました。
S夫:REBELLION(レベリオン)がチームのメインスポンサーさんです。
C子:スイスの超高級ブランドですよね。
S夫:順番でいうと、カーレースから生まれた時計ブランドなんですよ。
C子:? というと?
S夫:モータースポーツ発祥の地、欧州には「プライベーター」と言って、自動車メーカーではない組織や個人がレースに参戦することが珍しくないんです。レベリオンもそのひとつ。レーシング・マシンは精密機械の塊ですから、その技術を生かして、タイムピースと呼ぶにふさわしい時計をつくった、というわけです。
C子:知らなかった!
▲ Audi Team Mars〈REBELLION Mars Audi RS3 LMS〉
S夫:こちらがAudi Team Mars(アウディ・チーム・マーズ)のマシン、〈REBELLION Mars Audi RS3 LMS〉です。
C子:おおお! かっこいい!
S夫:チームにはシーズンごとにテーマカラーがあって、今シーズンは黒とグレー、ワンポイントで赤が入ります。このマシンでも基本的なデザインは踏襲しています。
▲ 今回のデザインのモチーフになったレベリオンR-13。2020年の世界耐久選手権で活躍していたマシン。
C子:車体のあちらこちらにシートが貼られていますね、スポンサー各社のロゴとか。
S夫:だけでなく、ボディ全体にもシートを貼っていますよ。黒とグレーと、赤のラインもみんなシートです。
C子:えっ? 塗装した上から、文字だけを切り貼りしたんじゃないんですか?
S夫:と、一見して塗装に見えるシートの使い方が、今回のデザインの大きなポイントです。
C子:車体は黒かグレーだと思ってました! ぜんぶシートなんですね!
S夫:いくつかにシートを分割して貼っています。ちなみに元の色は、このグレーのシートよりも金属っぽいシルバーです。
C子:うむむ、ドアの隙間までびっちりシートを貼っているからぜんぜんわからない。
C子:でも、どうして塗装しないんですか?
S夫:まず、塗料の量を考えてみてください。その分だけ車体が重くなってしまいます。
C子:そうか! コンマ何秒の世界を争う厳しい世界、軽い方がいいんですね!
S夫:それと、施工もかなり大変だと思うんですよ。時間も手間も。
C子:今回の施工はどれくらいかかったんですか?
S夫:今回は新人くんも入れた4人で、半日くらいでした。
C子:早い! こういう三次曲面に貼るのって難しそうなのに。
S夫:細かいところは現場で合わせて、つなぎ目がわからないように貼っています。
C子:あっ、触るとわかりますね、曲面が変わるところでつないでいる。
S夫:そのあたりをわからないように貼るかがプロの技です(えっへん)。
▲ カーラッピング メイキング動画
S夫:もうひとつ、シートの良いところは、キズがついてもすぐ補修ができるところです。
C子:よーく見ると、ありますね、ちっさいキズが。
S夫:直線では200キロ以上出ますから、小石が跳んだりして、小さなキズがつくのは日常茶飯事なんです。
C子:そんなとき、シートなら!
S夫:文字の追加もできます。フロントのカバーに新しいカッティング文字を貼るのを手伝ってください。
C子:車体のセンターに入っている赤いライン、すごいきれい。かっこいいですねー。
S夫:お褒めをどうも。フロントウィングとセンターと、要所のディテールに、マテリオの箔シートを使っています。
C子:やっぱり箔シートだったんだ! でも、こんな発色と絵柄のシートってありましたっけ?
S夫:ふふふ。赤銀舞箔シートの上から、IROMIZUの赤(品番:07-100ic)を重ね貼りしています。今回が初のデザイン事例です。
C子:箔シートに重ね貼り??? ななな、なんて贅沢な!
S夫:IROMIZUを重ねることで耐久性を高める効果もありますが、あえて、箔特有の光の反射感を抑えて、シックなデザインを狙いました。
C子:色といい、柄といい、日本(JAPAN)を連想させるデザインになっていますね。
S夫:それが、クライアントからの大事な要望のひとつでもありました。
S夫:我ながら、赤銀舞箔にIROMIZUを重ね貼りしたのは良いアイデアだったと思います。
C子:他社にはない、中川ケミカルならではのシート表現になりましたよね。
S夫:サンプルで検討はしていますが、実際に貼る面が大きいので、ドキドキの施工でした。でも、透明色のIROMIZUとの組み合わせによって、箔の質感をさらに生かすことができたと思います。
C子:他の組み合わせも見てみたいな。シートの可能性がまた拡がりましたね!
S夫:私たちにもまだまだ知らないシートの表情があるのだと実感しました。
▲ 「ピレリ スーパー耐久シリーズ2020」初戦 富士SUPER TEC 24時間レース会場にて撮影
S夫:レース中はものすごいスピードで走ってますから、遠くからでも、ゼッケン番号だけでなく、自分のチームのマシンだと一発でわかる明瞭なデザインが今回、求められました。
C子:ふむふむ。こうしてみると、いろんなカーラッピングがあるんですね。
S夫:キャラクターなどが描かれているマシンは、インクジェットで1枚のシートに出力して、一気に貼っていく施工方法ですね。
C子:なるほど。鉄道の車両ラッピングと同じですね。
S夫:これからの時代、今回のアウディのマシンのような、複数のシートを使ったデザインが流行(はや)るみたいですよ。
C子:カーラッピングに流行り・廃(すた)りがあるんですか?
S夫:今回のデザインに際していろいろとリサーチした際に、カーラッピングを専門にやられている業者さんに教わりました。
C子:どの世界にもその道のプロがいらっしゃるのですね。
S夫:日本での事例はまだイベント仕様車くらいですが、欧米では、車1台まるっとラッピングするのが珍しくないんですって、新車を買った場合も。
C子:まるっと? なぜ? 新車にビニールかけるようなものかしら。
S夫:日本と違って、買うときに色の選択肢がないんだとか。好みの色の車にすると、納品が何カ月も先になるので、シートで手っ取り早く好きな色に変えちゃうんですって。
C子:そんな使い方もアリなんですね!
S夫:新たな可能性を感じます。耐久性を高めて、かつ服を着替えるように、車の色を変える。日本もそうなるとおもしろいのになぁ。
▲ 「ピレリ スーパー耐久シリーズ2020」初戦 富士SUPER TEC 24時間レース会場にて撮影
S夫:Audi Team Marsは前回、静岡県富士市で9月5日に開催された「ピレリ スーパー耐久シリーズ2020」の初戦、24時間耐久レースで、見事に3位表彰台を獲得しました!
C子:おめでとうございます!(パチパチパチ!)
S夫:もう、我がことのように嬉しかったです。感動しました。
C子:・・・ということは、富士で観戦したんですね?
S夫:前日に会場で施工したので。いやはや、今回はスリリングなスケジューリングでした。本番はどしゃ降りの雨で、寒かったなぁ。
C子:あら、今日も雨のせいで予選が途中で中止ですって。明日の決勝は晴れてほしい!
S夫:そんな慌ただしいところを、ドライバー兼チーム監督の加藤さんに時間をとっていただいてます。デザインの詳しい話や、弊社のシートが採用された経緯などをこの後、うかがいます。
C子:監督さんに? デザインの話を???
S夫:お詳しいですよ。今回のデザインをマンツーで打ち合わせしたのが加藤さんですから。
C子:ええっ? それもカントクの仕事なんですか?
S夫:そんな素朴な疑問の答えも明らかになるでしょう。車オンチのC子さんに代わって私がインタビューします!