- 2020.08.07
- 2018.11.21
第20回CSデザイン賞 一般部門グランプリほか上位入賞作品を紹介
CSデザイン賞は、株式会社中川ケミカルが1982年に創設したアワードです。
社会全体でカッティングシートをはじめとする装飾用シートを使った創造性に優れたデザインを共有したい、という考えから、同社のシートを使っているかに関係なく応募できるのが特徴です。これは幾多あるメーカー主催のアワードでは珍しい規定です。実際に施工された事例作品による一般部門と、2002年から加わったデザイン提案による学生部門が、2年に一度、あわせて開催されます。
▲ 第20回CSデザイン賞ポスター(デザイン:永井一正)
▲ 一般部門グランプリ受賞者に贈られるトロフィー。CSを象った文字を動かして円形の木箱に格納できる。今年の贈賞式では、トロフィーをデザインした五十嵐威暢さんから、20回目の開催を祝福するビデオメッセージが届けられた
CSデザイン賞は、今年で満36年、数えて20回目の節目となりました。10月9日に都内で開催された贈賞式の様子とあわせて、一般部門・学生部門の入賞作品をご紹介します。
グランプリは3日限りのパブリックアートが獲得
一般部門グランプリ「Beautiful Bridge #2」
デザイナー/ラング&バウマン
クライアント/TOKYO ART FLOW 00 実行委員会
プロデュース/スパイラル/株式会社ワコールアートセンター
フォトグラファー/神宮巨樹
▲ 審査委員長 原研哉氏(画面左端)から表彰される、ラング&バウマンの二人
応募数161点の中からグランプリに選出されたのは、世界を舞台に活躍しているスイスのアーティストユニット、ラング&バウマン(lang/baumann)によるインスタレーションです。サビナ・ラング(Sabina Lang)さんとダニエル・バウマン(Daniel Baumann)さんは、建築と作品がどのように作用しあうのかに着目し、ビルや道路などの公共空間に塗装を施すなどして、新たな空間へと変容させる作品を世界各地で発表しています。
「Beautiful Bridge #2」は、2016年7月29日から31日までの3日間、東京・二子玉川で開催されたアートプロジェクト「TOKYO ART FLOW 00」で披露されました。多摩川に架かる新二子橋(国道246号)を支える、高さ約9メートル、横幅約26メートルの橋脚を、幾何学的な縞模様で彩り、一夜にして作品タイトル通りの「ビューティフル」な空間へと変貌させました。
▲ グラフィティ(落書き)が描かれたコンクリートの橋脚の形状に合わせて、分割したシート55枚を貼り合わせ、プロジェクトのスタッフら6人が延べ3日、計24時間ほどで完成させた
受賞者 ラング&バウマンのコメント
ラング&バウマン: 「この場所を選んだのは、美しさと醜さのバランスがとても都市的だと感じたからです。作品は恒久展示ではなく、会期終了後に現状復帰を要したため、カッティングシートを使った一時的なウォールペインティングを選択しました。実を言うと、私たちには装飾シートは主に広告に使われる素材というイメージがあり、仕上がりに不安を覚えていました。下地となるコンプリートの粗さまで表現した、私たちのイメージどおりのペインティングになるかどうか。結果は、発色、色の輝きともに素晴らしく、とても満足しています。私たちの表現の新しい可能性だけでなく、場、空間、空域をも拡げることができた。香港で進行中のストリートペインティングでもシートを使う予定です」
▲ ライトアップされた「Beautiful Bridge #2」。会期中、昼夜を問わずに記念撮影の場に
審査委員長 原研哉氏の総評
「カッティングシートはユニークな素材で、この素材なくして今日では環境デザインはできない。それをどのように使うかが、毎回の審査のポイントになっている。前回のグランプリ作品(共同住宅のリノベーション〈ハイツYの修理〉)は、どこにシートが使われているのか一見してわからないデザインだったが、今回は、グラフィティという落書きが元からある橋脚にシートを貼るという、儚い時間の中に作品を置いた、切ない素材として都市に彩りを添えた点が評価された」(贈賞式コメントより)
▲ 第20回CSデザイン賞 一般部門 総評動画
ラング&バウマンには、これまでにも〈Beautiful Steps〉や〈Beautiful House〉といった作品があります。タイトルにはどのような意味が込められているのか、二人に尋ねてみました。
ラング&バウマン: 「すべてを言い表しているようでいて、逆に全く意味をなさない、それが〈Beautiful〉という言葉ではないでしょうか。私たちは常に、作品名はフラットに、シンプルなものにしようと心がけています。見る人に先入観を与えないように。それと、少しだけ自らへの皮肉も込めて。自分の作品を〈Beautiful〉だなんて、おかしいでしょう?」
一般部門 準グランプリは3作品が受賞
一般部門の準グランプリには3作品が選出されました。ここからは写真を中心にご紹介します。
一般部門 準グランプリ「TOKYO ART BOOK FAIR 2017」
ディレクター/中島 佑介[(株)リムアート]
アートディレクター/田中 義久
協力/東京藝術大学デザイン科 視覚・伝達研究室 教授 松下計、2017年度 東京藝術大学デザイン科 視覚・伝達研究室 修士1年生、2015-2017年度 東京藝術大学デザイン科 有志学生
クライアント/一般社団法人 東京アートブックフェア
フォトグラファー/山中 慎太郎
天王洲アイルで10月5日から4日間にわたって開催された、アジア最大級の本の祭典「THE TOKYO ART BOOK FAIR 2017」におけるサイン計画のデザイン。国内外の書店、出版社、アーティスト、ギャラリーなど出展者は350を超え、多数の来場者が見込まれた。メインとなる会場と、連携イベントが開催される周辺のショップやギャラリーとを結び、スムーズに誘導するためのデザインが各会場の内と外とでそれぞれ求められた。
▲ 来場者に配布したマップを回収して再利用するRECYCLING SPOTまわりのサイン
▲ TABFメイン会場(寺田倉庫)の館内。4フロアに分かれ、さらに1フロアで最大約180のブースが出展
一般部門 準グランプリ「はる つくる」
ディレクター/飛田 正浩[スポークン ワーズ プロジェクト]
デザイナー/飛田 正浩[スポークン ワーズ プロジェクト]
クライアント/(株)中川ケミカル
映像/水川 史生[e.d.s]
コーディネーター/宮川 直行
CS デザインセンターで2018年2月から3月にかけて開催された企画展で発表された作品。ファッションブランドspoken words projectが、中川ケミカルのテンタックを用いて、実験的なファブリックを制作した。
▲ 本展が初披露となった《ベスト》の作品
▲ 数種類の布生地をテンタックで貼り合わせ、裾上げして制作された《カーテン》
一般部門 準グランプリ「はぎのの森」
ディレクター/大平 由香理
デザイナー/大平 由香理
クライアント/障害者支援施設 大分県日田はぎの園・大分県
エージェンシー/NPO法人 BEPPU PROJECT
フォトグラファー/中野 莉菜
大分県から委託されたNPO法人が、県内の障害者福祉施設、高齢者福祉施設、児童養護施設などにアーティストを派遣し、芸術体験活動を行なう「みんなの芸術文化体験事業」で制作された作品。派遣事業の記念として、「森」をテーマに装飾用シートIROMIZUにマーカーなどで絵を描き、それをガラス窓に貼り、ひとつの作品として完成させた。
▲ 作品が制作されたのは、大分県日田市内の障害者支援施設
▲ 施設を美術館のようにしたいという願いから、現在も園内に飾られている
そのほか一般部門では、アート作品、サイン計画、寺社の内装デザインの事例など8作品が優秀賞など各賞を受賞しました。同デザインアワードの公式サイトでも紹介していますので、詳しくはそちらをご覧ください。
第20回CSデザイン賞 一般部門 受賞作品はこちら
https://cs-designaward.jp/20th/general.html
参考:「TOKYO ART FLOW 00」イベントレポート:デザイン×カッティングシートWEBマガジン「hello!CS」レポートC子とS夫が行く! ニコタマ
https://hello-cs.com/article/3190/
詳細:デザイン×カッティングシートWEBマガジン「hello!CS」レポート
https://hello-cs.com/article/3979/