- 2020.08.07
- 2015.07.06
リノベに活用!新たな暮らしを彩るカッティングシート
「ReNOA東日本橋」について
分譲マンションの共有部にカッティングシートが使われた例をご紹介します。 先ずは立地の確認から。
上の案内図の赤い印が今回ご紹介する「ReNOA(リノア)東日本橋」です。西側は問屋街として有名な馬喰町、東には隅田川、北に流れる神田川の両岸には屋台舟が舳先を並べ、江戸の面影が残る土地柄です。
8階建てのこちらのマンション、公式サイトにもある通り、新築ではありません。築20年の内外装をリノベーションしたものです。リノベーションの良いところは、設備や内装が一新されてなおかつ販売価格が新築より抑えられること。都心回帰の可能性を広げる取り組みとしても注目されています。
手掛けたのは、リノベーションを専門に手掛ける(株)リビタ。担当者は、この歴史ある土地の新しい住民となる人々が、町に早く溶け込めるようにするにはどのような手助けが必要かを考えました。
暮らしとコミュニティをデザインする
界隈は道が縦横斜めに交差していて、例えば小学校の登下校、公園や図書館、近所のコンビニに行って帰るにも、慣れないうちは大人でも迷子になりそう。そこで考え出されたのが、 1階共有部の壁に「シェアマップ」を掲示することでした。
街の情報をシェアする
縦2.1m×横3.5mのマップは、マンションを拠点に、周辺の主要駅や公共施設、飲食店やショップ、大まかな距離も記されています。3枚のカッティングシートに分けて出力し、繋ぎ目をきれいに貼り合わせたものです。
マップはこれで”完成”ではありません。数種類のマグネットボードが用意され、文字を書き込んで、マップの上から貼れるようになっています。例えば、此処にこんな店があります、 この店の○○が美味しかった、というような自らの実体験を上書きして、その情報を住人同士でシェアできるのです。よく云うではありませんか、頼りになるのは「口コミ」だと。それが”ひとつ屋根の下”に住むご近所さんからオススメされたら、相手にも、店に対しても、グッと親近感が増しますよね。
住人がマップを更新し、交わされるやりとりを介してコミュニティが育まれ、地域への親しみも増していくーーそんな光景を想像しながら用意されたのが、この「シェアマップ」なのです。
街を歩いてこそ、生まれる”出会い”
その一役を中川ケミカルが担うきっかけとなったのは、どのような町なのかを自分の目で確かめるために、 リビタの担当者が東日本橋界隈を歩き回っていたある日のことでした。地元の雑貨屋さんで、この地で創業して今年で41年めとなる中川ケミカルと、 CSデザインセンターについて教えられたのです。「何か面白いことができないか」という話になり、「シェアマップ」のほかにも、以下3カ所の館内サインをカッティングシートで表示することになりました。
館内サインその1:駐輪スペース
▲ 引き戸の開閉によって変化する絵柄。扉2枚が重なっても赤い文字が見えるようにした。
館内サインその2:エレベーターホールの階数表示
こちらのホールの壁は新しく塗装されたものです。上の階にいくほどブルーが濃くなっていくグラデーションがつけられています。表面に細かい凹凸がある仕様の壁は、実はカッティングシートには手強い相手です。施工の際に壁とシートの間に空気が溜まりやすいからです。
上の画は、布や「リベットブラシ」を使って、貼ったシートと壁を馴染ませているところ。ヒートガンで温風をあて、シートをのばしながら、丁寧に仕上げていきます。階数表示サインは、階によって数字のサイズと貼る位置を変えています。この効果は、エレベーターで最上階まで上がってみるとよくわかるので、下の動画をご覧ください。
館内サインその3:スカイリビングへの誘導
「ReNOA東日本橋」の屋上には、住人だけが利用できる「スカイリビング」が新設されています。家族や住人同士でちょっとしたパーティも開けるようにと、テーブルに洗い場も用意されています。日中は陽当たり抜群、夜は両国橋の向こうに東京スカイツリーが浮かび上がります。夏は隅田川大花火大会の特等席です。
この素敵な屋上への誘導サインもカッティングシートです。8階のドアの把手まわり、階段下の壁、屋上に出るドアまわりの計3カ所に、それぞれデザインを少しずつ変えて、屋上に向かう前のワクワク感、開放感を表現しました。
コンセプトは「大人の遊び心」
これらのサイン計画は全て、中川ケミカルのデザイナーが担当しました。過去に公共建築などの館内サインを手掛けたことはありましたが、集合住宅では初の試み。「ReNOA東日本橋」がコンセプトとして掲げる「ヴィンテージ感」や「大人の遊び心」を、カッティングシートの特色と職人の技術でいかに表現するかが今回のテーマでした。情報を上書きできる「シェアマップ」は、マグネットボードが使えるように、シートを貼る壁に鉄板を入れることを含めて提案し、了承されたものです。
「リノア東日本橋」に住みたくなった? 残念、早々に全21戸が完売しています。館内のサインやシェアマップも住人以外は見られませんので、今回のARTICLE で詳しくご紹介しました。
アナログながらも温もりが感じられるやりかたで、人と人とが情報をシェアする楽しさ、その先にある暮らしの豊かさについて、お伝えできれば幸いです。
「ReNOA東日本橋」公式サイト
http://edge-life-tokyo.jp/
注.防犯上の理由により、住民と関係者以外の館内への立ち入りはお断りしています。